「ね、お願い!!」

「あのね、サクラちゃん・・・」

「どうしても読みたいの・・・お願いします!!」

「サクラちゃんの気持ちも分からないではないんだけど・・・」

おねぇちゃんが苦笑しながら手にしている本・・・どうしてもその本が読みたいの!
ため息をついて本を持ち上げたおねぇちゃんを見て瞳を輝かせた。

「それじゃぁv」

「ダーメ。・・・サクラちゃん、この本は18歳以下の人は読んじゃいけないのよ?」

「だってぇ〜カカシ先生がどんなの読んでるか気になるんだもん!!」

そう私が今読みたい本は18禁で有名な「イチャイチャパラダイス(上)」
(とりあえず続き物は順番に読まなきゃね。)
やっぱり恋する乙女としては好きな人が読んでいる物は読んでみたいし、好きな人が好きなものは好きになりたいじゃない?
だから知り合いのおねぇちゃんの本屋でこっそり読ませてもらおうと思ったんだけど・・・これが中々手強い。

「ちょっとだけ!初めのページだけでも・・・ね?」

「可哀想だけどダーメ。あと6年経ったら読ませてあげるから・・・」

ね?って言って昔みたいに私の頭をおねぇちゃんは宥める様に撫でるけど・・・諦められない。

お店の電話が鳴っておねぇちゃんが後ろを向いた瞬間、カウンターの内側に置いてあった一冊のイチャパラを手にいれた。
伊達にアカデミーに通ってるわけじゃないんだから!

「6年経ったらカカシ先生32歳になっちゃうじゃない!」

(その頃他のオンナに奪われてからじゃ遅いのよ!)

「サクラちゃん!?」

おねぇちゃんに捕まらないよう狭い店内を駆け抜け、出口に向かった所で誰かに勢いよくぶつかった。

「いったぁー・・・何処見てんの・・・よ?」

たいして高くもない鼻を擦りながら、キッと目の前にいる人物を睨みつけた・・・が、その相手を確認した瞬間思わず笑みが零れてしまった。

「なーにやってんだぁ、サクラ?」

「カ・・・カカシ先生!?」

そこに立っていたのは愛しのカカシ先生だった。
私は手にしていたイチャパラを出入り口付近で平積みになっている本とさっとすり替えると、申し訳なさそうな顔でカカシ先生に頭を下げた。

(ここで慌てちゃオンナがすたるってもんよ!)

「ゴメンなさいカカシ先生。あたしったら・・・」

「・・・で、オレが32歳になると何だって?」

「カカシ先生聞いてたんですか!?」

「いや、たまたまイルカ先生の代わりに本を取りに来たらオレが32歳になるーって妙な声が聞こえて、中に入ったらオマエがいた・・・ただそんだけ。」

「あ、その、えっと…それは・・・」

カカシ先生が私の答えを待っている。
外にいる時は周囲の様子を探るためせわしなく動くはずの瞳が、今は私だけを見つめてくれている。



口布と額当てで殆ど隠れてしまっているけれど整っている顔・・・流れる銀髪・・・あぁやっぱり大人の男性ってステキ・・・。
サスケくんも大人びていて格好いいけど、本当の大人には敵わないわよねぇ・・・。
至福の時を満喫しているとカカシ先生の声が私を現実へと引き戻した。

「呆けるなら端行ってやってろ。あ、すいませ〜ん、先程連絡した者ですが・・・」

カカシ先生は私の横をすり抜けると、カウンターから出てこようとしていたおねぇちゃんの元へ行ってしまった。

ガーン!!天から地へ落下したかのような衝撃。
何?カカシ先生は私の答えを待っていたんじゃないの!?

(しゃーんなろー!!好きな人の前だと緊張してうまく話せないって言う乙女心、仮にも上忍だったら気づけよ!)

「何持ってんだ?」

戻ってきてくれたのねv
思わず満面の笑みを向けてしまう。
握り締めていた拳をゆっくり下ろして振り返ると、カウンターにいた筈のおねぇちゃんが消えている。
まさに今この店内にはカカシ先生と私の二人っきりっ!?
ありがとうカミサマそしておねぇちゃん!このチャンスにサクラはポイントを上げます!!

「えっとぉ、ちょっと調べ物するのに使う本を探してて・・・これならいいかなぁ〜って・・・」

「・・・それ、ナルト用か?」

「え?」

よく見るとそれは「アナタも今日から忍者になれる!」と言うタイトルのアカデミーに入る前の子供が読むような本だった。
やばっっ・・・何も考えず手近の本とイチャパラをすり替えたからこんなの取っちゃったんだ!!
慌てて背中に隠して「あははは・・・」と力なく笑うと、カカシ先生はふぅっとため息をついて奥の棚の方に消えて行った。

ああぁぁ・・・春野サクラ一生の不覚。
ポイントを上げるつもりが下げてしまった・・・。
折角アカデミー外でカカシ先生と二人っきりで話できたのに・・・。

ガックリ肩を落としながら本を元に戻し、店を出ようとしたら背後に人の気配を感じた。

「ナルトにはそれで十分だけど、サクラにはこれがいいんじゃないか?」

「え?」

「基本を大事にするヤツは必ず伸びるからな。サクラは本当に良く勉強してるな。」

「カカシ先生・・・」

両手を組んで胸の前に持って行く。
あぁ、やっぱり私カカシ先生が好き!
まだ12歳で他の大人の女には肉体的には勝てないけどあと数年もしたら誰もが羨むナイスバディの女くノ一になるんだからね!
そしたらいつでもお嫁に行きますカカシ先生!

「サクラ、サークラ・・・大丈夫かオマエ?さっきから顔色ころころ変わってるぞ?」

「だ、大丈夫っ・・・ですっ!はい!!ほ、本ありがとうございました!」

「金は自分で出せよ。」

「はーい・・・って、高っっ!」

値段を見て驚いた。
イチャパラの2倍の値段・・・こんなの私の今のお小遣いじゃ買えないよぉ。
そんな私を放ってカカシ先生はおねぇちゃんと何か話をしている。

・・・私がおねぇちゃんくらいに美人だったら、少しは私を意識してくれたカナ?

チラリと先生の方を見るとその表情はいつもより柔らかく見える。
はぁ、早く大人になりたいなぁ。
手にしている財布の中身を見ながらため息をついた。
このため息は・・・どうして出てきたんだろう。
お金がないのはいつもの事なのに・・・。
心から沈んだ私に天から眩しい光が差し込んだ・・・それは愛しい人の声。

「その本古いのでよければオレの家にあるから今度持って来てやるぞぉ〜」

「本当ですか!!」

先程の落ち込みは何処へやら…泣いたカラスがもう笑った・・・期待を込めた目でカウンターで支払いをしているカカシ先生の方を振り返った。

「ま、使いこんでっから汚いけど読めなくはないだろう。」

「きゃ〜ありがとうございますvv」

やったぁー!カカシ先生の使った本・・・貰えるのね。
よっしゃ、ラッキー!!(色々な意味で(笑))

「その代わり・・・」

喜び勇んで先生の元へ行くと、ずしっと言う音が聞こえそうな紙袋が手に乗せられた。

「悪いけどイルカ先生のトコに持ってっといてくれ。」

「え゛っ゛?」

「オレちょ〜っと用事出来たからさv悪いなサクラ。」

「ちょっ、ちょっと!!」

そう言うと先生はあっという間に私の目の前から姿を消えてしまった。
あとに残ったのは重い袋を押し付けられた私と、目の前で消えてしまったカカシ先生を不思議そうに眺めているおねぇちゃんだけだった。

「信じられない!か弱い女の子にこんなの持たせるなんて!!何よ!急用って!!」

言葉と態度で怒りながらも内心、笑いが止まらない。

(カカシ先生にお願いされちゃったv)

「サクラちゃん・・・大丈夫?」

カウンターではおねぇちゃんが不安そうな表情で私を見ている。
そんなに弱く思われてんのかしら?

「大丈夫、これくらい持てるわ。」

「そうじゃなくて・・・こっちにあと2箱あるんだけど・・・。」

「なにぃー!!!!」

手にした袋を一旦床に置き、カウンターへ回り込むと大きな箱が2箱ドンッと詰まれていた。

「・ ・ ・」

「配送しましょうか?って一応聞いたんだけど、サクラなら大丈夫ですよっておっしゃって・・・」

「え?カカシ先生が!?」

「えぇ。」

私なら大丈夫?って事は・・・私って頼りになるって事!!

「ふふふ・・・」

「サ・・・サクラちゃん?」

「大丈夫よおねぇちゃん。店先まで出してくれれば持っていくからv」

にっこり笑っておねぇちゃんに店先まで本を出してもらった。





ちょうどその時、道の向こうでフラフラしながらこちらに歩いてくるナルトを見つけた。

「あ、サクラちゃんv」

私の姿を確認すると両手が千切れんばかりに手を振りながらこっちに走ってくる。
・・・ちょぉ〜っと恥ずかしいかも。でも背に腹は変えられないわ。

「ナルト、ちょっと手伝って欲しいんだけど?」

そんな事表面にも出さず、にっこり笑顔で微笑んだ。







女、春野サクラ
一回り年上のはたけカカシに片思い中。
見通し暗いこの恋、オンナの意地にかけても
ぜったいに叶えてみせるわよ!
しゃーっっんなろぉ〜!!





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え〜、コメントは過去のモノをそのまま使うという荒行に出ました(笑)ま、気にするなっ!!

猫缶のねこサマから頂いたイラストのお返し第一弾!
初パロディ、初NARUTOな上、初サクラ(カカシに片思い)です。初めてだらけだ!!
しかも私アニメのNARUTOしか知らないので、おいおい違うだろうっ所あると思いますが温かく見守って頂きたい(苦笑)
いや〜・・・ドリームじゃないからどうしよう。とか思ったんですが結構書けました。
それもこれもカカシ先生が絡んでいたからでしょうが(笑)

裏話〜♪
サクラは結局例の本を手に入れられたのか!!
おそらくカウンターのおねぇちゃんが忙しそうにしてる時にこっそり盗み見てショックを受けたでしょ(笑)
その後暫くカカシ先生が本を読んでいるのを見ると涙しながら走って逃げたりして(笑)
この辺はねこさんとメールで話していたんですけどね。